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展覧会

平井 智 陶展 反映45 ‐イタリアから‐ Reflection 45 -from Italy-

平井 智 陶展 反映45 ‐イタリアから‐ Reflection 45 -from Italy-

2017年9月1日(金)~9日(土)
11:00~19:00(最終日は17:00まで)
会期中無休

作家全日在廊予定

【 平井智 <略歴> 】

  • 1947年 兵庫県尼崎市に生まれる

  • 1970年 大阪教育大学中等課程美術学科卒業

  • 1971年 京都市立工業試験所陶磁器研究所卒業

  • 1972-74年 ローマのニーノ・カルーソ氏のアトリエ助手、建築陶芸を学ぶ

  • 1974-76年 国立ファエンツア陶芸美術学校専科に学ぶ、イタリア政府給費留学生として在籍する

  • 1972年 第1回バッサノ国際陶芸シンポジウム招待参加(イタリア)

  • 1973-83年 ファエンツア国際現代陶芸コンペ出展(イタリア)

  • 1978年 グロッタリア国際陶芸展銅賞(イタリア)

  • 1979年 ファエンツア国際現代陶芸コンペ金賞(イタリア)
    国際陶芸アカデミー会員となる

  • 1981年 ファエンツア市にて制作活動に入る

  • 1981-86年 “新しい陶芸”グループ参加、イタリア各地で巡回展開催、後日本巡回

  • 1982年 ファエンツア国際現代陶芸コンペ銀賞(イタリア)

  • 1983年 アスティ国際ビエンナーレ展銀賞(イタリア)

  • 1986年 ナポリ地方国際陶芸展グランプリ(イタリア)

  • 1991年 Abitare con Arte,Milano銀賞(イタリア)

  • 1992年 Ceramic'92西武つかしん(尼崎)

  • 1992-93年 現代イタリア陶芸展(有田、信楽、土岐)

  • 1995-96年 アーティスト レジデンス(信楽陶芸の森)

  • 1998年 Ceramichevolmente展(伊丹市立クラフトセンター)

  • 1999年 Dialegus展 ニーノ・カルーソと二人展(ローマ、日本文化会館)

  • 2004年 アーティスト レジデンス(瀬戸)

  • 2005年 アーティスト レジデンス展Expo'2005愛知(瀬戸)

  • 2008年 “イタリアの風”2人展(東京イタリア文化会館)

  • 2010年 ファエンツア国際現代陶芸展日本人受賞作家展(東京イタリア文化会館、ギャラリーVoice多治見)

  • 2016年 Made in Japan展(ファエンツア国際陶芸美術館/イタリア)

平井智のマジョリカ陶「イタロジャポネ・マジョリカ」― 色彩と素材の美 ―

平井智が生み出すマジョリカ陶「イタロジャポネ・マジョリカ」は、特有の色彩美とともに、素材が発する色合いと質感が生かされている。それは、古陶の模倣で終わろうとしない平井の飽くなき探求と、そこに新しさを求めた姿なのである。

そもそもマジョリカ陶とは、14世紀以降、イタリアで発達した低火度焼成による色鮮やかな色絵陶器である。きめ細かな土を成形し乾燥させ、1,000度前後の温度で焼成する。次ぎに、表面に白い泥状の釉薬(白釉)を塗り、乾燥後に、赤、黄、緑、青、紫などの鮮やかに発色する顔料を用いて絵付する。最後に、すべてを覆うように透明釉を施し、最初よりも低い温度で焼成するというものである。

平井の作品の特徴は、マジョリカの土を単なる形を作る素材としてだけなく、作品を構成する色や質感にも用いているところにある。古陶としてのマジョリカ陶は、表面全体に白釉が掛けられ、その上から絵付が施されている。それは白い素地の上に絵が描かれているという印象である。ところが平井の作品は、赤茶色したマジョリカの土の色合いを見せつつ、白釉があり、その上に絵が描かれている。要するに、絵と色彩のみで構成されていたマジョリカ陶の制作プロセスとそこから生まれる美感を解体し、土の色合いとともに質感をも取り込んで再構築したことにより、これまでにないマジョリカ陶を生み出しているのである。

この、土が持つ質感の活用は、日本人としての感性が導き出したといえるかもしれない。日本の古陶、とくに茶陶には、土見せという素材を見せる部分があり、鑑賞者もその素地の色や素材感を愛でてきた。その文化を生活の中で体験してきた平井が、マジョリカの土に触れたことで、その素材と向き合うのはごく自然な流れのように思うのである。その土は指紋を再現することができるくらいに非常にきめが細かい。つくり手としてこの素材に心惹かれ、それを生かして新しい何かがつくり出せないかと考えたとしても不思議ではない。その結果が、マジョリカの土が発する赤茶色の色感と、きめ細かさが生み出す優しくやわらかな質感を取り込んだ平井独自のマジョリカ陶「イタロジャポネ・マジョリカ」となるのである。

今回の個展では、日本人である平井が、イタリアと日本を行き来しながら活動してきた45年の軌跡を、過去の作品も含め、まさに現在(いま)の作品と、未来を見据えた新たなチャレンジで示すという。文化や環境、習慣なども取り込みながら制作した、イタリアにも、そして日本にもなかった、色彩と素材の美しさを融合させた平井のマジョリカ陶「イタロジャポネ・マジョリカ」は、多くの人々の目と心を楽しませることだろう。

(唐澤昌宏/東京国立近代美術館工芸課長)

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